瑠璃と翡翠

 瑠璃と翡翠の間にきらきらと揺れる銀の光は、湖に眠る龍の吐息。うららかな春に誘われた私を、日差しが眩く抱きしめる。

色とりどりのフルーツと甘い砂糖菓子が告げた午後三時、白いパラソルを広げたら、湖畔のティーパーティーが始まる。

風がそよいで時計の針を飛ばしたなら、もうここには時間は存在しない。ただあるのは、紅茶の旬を告げる砂時計だけ。

新緑が風と踊る時、優しく撫でられた湖は一段と輝く。いつか未来に、あなたが今日を思い出す限り、この瞬間は永遠となる。

伝説の乙姫の行方は誰も知らない。ただいつまでもあなたがしあわせでありますように。

夕方になったら、湖にボートを出そう。静かに佇む鳥居を見に行く為に。黄昏時、湖面は熟れた紅茶となり、新緑と青空のフレーバーもやがて琥珀色に染まるだろう。

漕ぎ疲れたら秘密の岸辺で二人きりで眠り、心ゆくまで運命を太陽と月に託そう。

箱根芦ノ湖は、瑠璃と翡翠の地球色。龍が瞬きをする時、ここは小さな星となる。誰も辿り着けなかった永遠は、きっとすぐそこに。

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