花まつり② 茉莉音の場合 花まつり、それはお釈迦様のお生まれになった4月8日をお祝いする行事。 ー私、薬師寺 茉莉音はお寺の子なので、生まれた時から人生はお釈迦様と共にあり、毎年の花まつりも決して逃れられない定めだった… 続きを読む 天鳳寺女学院の気怠い日常5
カテゴリー: 小説
Silent・Museum
夜の美術館で、逢いましょう。 竹橋には、雨が降っている。濃藍色の空からさあぁと銀糸が垂れては落ち、落ちては消える。 女はこの夜と同じ色のブラウスとスカートを身に纏って、男を待っていた。場所は美術館前。そんなところで待っ… 続きを読む Silent・Museum
瑠璃と翡翠
瑠璃と翡翠の間にきらきらと揺れる銀の光は、湖に眠る龍の吐息。うららかな春に誘われた私を、日差しが眩く抱きしめる。 色とりどりのフルーツと甘い砂糖菓子が告げた午後三時、白いパラソルを広げたら、湖畔のティーパーティーが始ま… 続きを読む 瑠璃と翡翠
シンデレラ・シンデレラ
ーシンデレラは0時までに馬車に乗って帰らないといけない。 それは令和の現代でも同じ。0時台の終電で帰らないとロマンスはなし崩し的なシナリオを辿って、自身はたちまち軽い女扱いされてしまう。別にそういうワンナイトラブが好き… 続きを読む シンデレラ・シンデレラ
天鳳寺女学院の気怠い日常3
3 天鳳寺女学院には、師弟制度というものがある。一つ上の学年の先輩が後輩を指導するというものだ。イメージとしては、宝塚の本科生・予科生とか、「マリア様がみてる」の姉妹(スール)制度かもしれないが、天鳳寺の師弟制度はそん… 続きを読む 天鳳寺女学院の気怠い日常3
天鳳寺女学院の気怠い日常2
2 空の色が淡く変わり始める16時、この女学院にはゴーン…と重低音な天鳳寺の鐘が鳴り響き、窓の外には鐘の音に不似合いな阪神間の街並みと海が見える。その景色を見ながら「あぁ、もう少しで今日も終わる」と私は無力なラットが… 続きを読む 天鳳寺女学院の気怠い日常2
チョコレートで生き永らえて②
「森沢ってガリ勉だし空気読めないしキモいよな」 「分かる、彼女にしたくないランキングNo.1」 「てか、彼女にするとか考える自体無理」 もうアラサーなのに、夢の中で、幼い頃に男の子から言われた言葉が蘇る夜がある。本ばかり… 続きを読む チョコレートで生き永らえて②
チョコレートで生き永らえて①
失恋して、摂食障害になった。 といっても、水は飲むし、飲むゼリーくらいは口にするし、そもそも、失恋だって、別に「嫌い」と言われた訳でもない。じゃあ、何故かと言うと、自分の中ではっきりと分かっている。 …10年間好きだっ… 続きを読む チョコレートで生き永らえて①
左手薬指の呪い
「あれ、今日はエクセルコダイヤモンドしてないんですね」 真美に言われてドキリとした。 僕の婚約指輪は梅田のエクセルコダイヤモンドで買ったブラックダイヤのもので、奥さんのダイヤモンドと対になった愛の証だ。いつも左の薬指にし… 続きを読む 左手薬指の呪い
浅香山ラプソディ第14話
第14話:寂しさを埋めるもの 「ひでちゃん…お願いだからもうやめて」 ジリジリと迫ってくるひでちゃんに何故か恐怖を覚える私。 「咲希…咲希…」 先生が私の名前を呼ぶ。ダメだ、完全に先生の目がいってしまっている。個室居酒屋… 続きを読む 浅香山ラプソディ第14話